『茶番も15年、続ければ王道。』

2023年5月17日で、ももいろクローバーZが15周年を迎えました。5/16、17に代々木で15周年のライブがあり、火曜日(定休日)に当選したので行ってきました。3年ぶりの声出し解禁のライブで、ちょっとどうかと思うぐらいよくて、それでブログを書いています。
ももクロのライブに初めて行ったのは、2013年、夏の日産スタジアムが最初でした。nicolasでは、どうしても行きたいライブがある場合は年に1回だけお店をお休みにできる、というマイルールがあります。実は、それを毎年ももクロのライブに使っていました。浅草の下町コメディ映画祭(堺正章トリビュートライブにケラさんと鈴木慶一さんのノーライセンスと堂島孝平を観に行くためにチケットをとったら、シークレットでももクロが出ることを当日知り、運命を感じる)、国立競技場、味の素スタジアム、幕張メッセ、東京ドーム、西武ドーム、大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナ、日本武道館などに参戦してきました。ファンになるまでの経緯を書くと本当に長くなるので割愛しますが、多くのももクロファンと同じような経緯だと思っています。

私は、「カフェとアイドルは似ているのではないか?」と考えて、ブログを書いたことがあります。(2014年のブログなので、今とは少し感覚が違うかもしれませんがもしよかったら読んでみてください。http://www.nicolasnicolas.com/blog/?p=1405
要は、カフェというジャンルの舐められ方が、アイドルのそれと似ているということと、それを覆す快感に共感したという話です。この感覚を私は結構大事にしていて、ももクロに限らず、アイドルを通してカフェの魅力やその在り方を考えてきました。
最近、鳥羽和久さんの『「推し」の文化論 BTSから世界とつながる』を読んで、この本はBTSとARMY(BTSのファンの呼称)の関係と、それによる世界とのつながり方についての分析の本なのですが、「これはももクロとモノノフ(ももクロのファンの呼称)の話なのではないか」と考えていたところで、ももクロ15周年のライブに行ってきたので、何を言ってるかよくわからないと思いますが、ちょっとなにか書きたくなってしまったので書いてみます。
個人的には、今はあらゆるカルチャーがファン同士によるコミュニケーションツールになりすぎていて、繋がりすぎることによる弊害のほうが気になってしまっています。なので基本的には、本当に好きなものは他者とは共有しすぎない、自分と対象との関係性を相対化しすぎないように意識していますが、それでもももクロについて、ももクロとの関係性について書いてみようと思います。

ももクロの15周年のキャッチコピーが素晴らしくて、
『茶番も15年、続ければ王道。』
nicolasは5月1日に12周年を迎えたばかりだったので、このコピーにはほんとうにしびれました。また「茶番」という言葉は「茶」が入っているだけあって、カフェ(喫茶店)のことを端的に表しているな、と改めて思いました。

ももクロを観てきて、茶番という言葉を隠れ蓑にしながら、他ジャンルのプレイヤーを巻き込みながらエンタメを提供するところや、ファンが「彼女たちが良く思われるように」と遠征先の各地でお金を落とし、モラルを大切にして行動するところや、赤のペンライトを持って全身赤の出で立ちのファンが、緑や紫のコールを全身全霊でするところや、まあとにかくいろいろ言いたいことはあるのですが、なによりnicolasがももクロに共感するいちばんの要因は、メンバーが脱退したグループだということです。
ももクロの10周年の直前、2018年の年明けに、ももクロから主要メンバーのひとりが脱退しました(ももクロは2011年にもメンバーが脱退していますが、nicolasが大きく影響を受けたのは2018年の脱退)。ここからももクロは「完成されたところから大事なピースが欠けたグループ」として見られるようになります。残されたメンバー(この「残されたメンバー」という呼ばれ方にもももクロは抵抗してきました)は、「欠けたグループ」と思われないようにアップデートをし続けます。ももクロの中で歌とダンスがいちばん上手だった有安さんが抜けたので、当然パフォーマンスのクオリティは落ちます。抜けた有安さんのパートを引き継いだあーりんは「(ファンが認めてくれるか)怖かった」と後に話していました。
最近nicolasを知ってくれた方はもしかしたらもうご存知ないかと思うのですが、nicolasもメンバーが辞めています。nicolasは2005年に「出張パティスリー」として結成したユニットです。私とゆかさんとパティシエの3人で、最初はライブイベントや映画のイベントにお菓子のケータリングをしていました。その後、2011年にお店を構え、2015年の年末にずっと一緒にやってきたパティシエがnicolasを辞めました。
平気なふりをしていましたが、私たちだって怖かったんですよ。nicolasのお菓子部門を引き継いだゆかさんは、深夜に「白金の夜明け」の「諦めすぎるとバカになるから」という歌詞を聴きながら、泣きながらお菓子を作っていました。あらゆるイベント出店の話を全て受けて、「nicolasはカフェです」と宣言をして、死に物狂いで頑張ってきましたが、それを支えてくれたのは、今までと変わらずに応援してくれたnicolasのファンの方たちです。推してくれて本当にありがとう。救われました。
nicolasが10年間ほとんどももクロに言及してこなかったように、nicolasのファンであることを公言せず、無言で、あるいは本当に小さな声で、だけど本当に大きな力で推してくれた方たちに、どうしても感謝を伝えたいと思いました。このブログを読んでくださっていますか?本当にありがとうございます。みなさんがいなかったら、nicolasは12年も続いていないんです。

ももクロのライブに行くといつも思うことがあって、こちらはファンなので推しに行くのですが、結果ファンがももクロに推されて帰ってくるんです。ちょっとこいつ大丈夫かとみなさん思うと思いますが、いや、やっぱりそうなんです。ももクロに限らず、誰かを推している方にはこの感覚は伝わるはずだと信じて書いています。これって、お店側が食べ物飲み物を提供してお客さんからお金を頂いたうえで、さらにお客さんから「ありがとうございます。元気がでました」と言っていただくことと本当に似ていると思います。ももクロには及ばないのは承知の上ですが、それでも信念を持ってカフェを続けることができているのは、お客さんに笑顔を、元気を渡せていると実感させてもらえているからです。

最後に。
カフェは職業ではなくて生き方です。カフェは、人生の目標です。
これはももクロの受け売りですが、そう思えるに至るまで、背中を“推して”くれたももクロに、ほんとうに感謝しています。ありがとう。

憧れを超えていこうと思った矢先に、ももクロに格の違いを見せつけられましたが、めげずに頑張っていこうと思います。
よろしくお願いいたします。